第23回(令和7年度)児童・生徒科学賞受賞者・受賞校概要

〇 阿部 楓樹(山梨大学教育学部附属小学校6年)
 「冬季に富士トラムを走行させるには?」

受賞者の写真

 富士トラムの問題点の1つである積雪時の走行を解決するため、本研究を始めた。富士スバルラインの5合目では、冬季に30cmほど雪が積もることもある。この積雪に対応するシステムの開発を目指している。
 1年目には、雪を溶かす技術の検討と実験を行った。検討や実験した方法としては、除雪車による除雪や消雪パイプから水やお湯を流して雪を溶かす方法、電気式ロードヒーティングによる融雪の3つで、電気式ロードヒーティングが最適であると結論づけた。理由は、人手が不要であること、マーカーと同時に配置すればランニングコストを抑えられること、傾斜でも使用可能なこと、効率的に雪を溶かすこと、などがあげられる。さらに自分なりに条件を揃えて、より良い電熱線の配置を探る実験も行った。
 2年目には、電気式ロードヒーティングの効率的な配置をより正確に検討する実験を行っている。システムの実現を目指し研究を進めていきたい。

 

〇 山梨英和中学校 自然科学部
 「甲府市のひっつきむしの秘密に迫る」

受賞者の写真

 本研究の目的は甲府市に生息する「ひっつきむし」を採集し、種を確定し、ひっつき器を観察分類、ひっつき力の測定をして考察することです。
 採集は1年間を通して17回実施、旗振り法と肉眼法で葉芽から果実まで採集し撮影・スケッチした。種類は20種類あり多種多様である。ひっつき器も多様で単独型と複合型があり要素(ひっつき器)を和集合で示した。ひっつき力は力学ばねばかりで5回測定しグラフ化した。最高はゴボウの2.0N(約0.20kg・f)で強さの理由は鉤爪のほか爪に小さな逆さ棘(かえし)を有しているからである。力の強いものはカラスの羽にも付着して遠くまで散布されるものもある。しかし力弱いものも近くに多くの種子を散布できるという利点がある。特定外来生物であるアレチウリは巧妙に生息を広げているため研究直後焼却処理をした。

 

〇 高梨 詩楠(山梨大学教育学部附属中学校2年)
 「多くの人に危険が伝わりやすい洪水ハザードマップの配色の検証」

受賞者の写真

 山梨県内自治体が作成する洪水ハザードマップの配色に着目し、年齢・色覚・国籍等の違いによって見え方に差が生じるのか、またその差が避難行動に及ぼす影響について調査・研究している。
 これまでに、甲府市内2地域を対象に、既存の洪水ハザードマップを基に、カラーユニバーサルデザインを取り入れた配色など4種類のサンプル地図を作成した。これらを用いて、浸水深の違いや危険度の伝わり方について、インターネットアンケートによる調査を実施した。その結果、現行の薄い色の組み合わせと比較して、「色差の明確な配色」「青系統の配色」は、多くの年代において見やすく、危険が伝わりやすいことが分かった。
 今後は、QGISと国土数値情報を用いた精緻なハザードマップの試作を進め、色覚や国籍の異なる人々を対象とした検証を行うとともに、自然界に見られる「構造色」が地図上での危険認知に与える影響についても検討を行っていく。

 

〇 黒田 佳那(山梨大学教育学部附属中学校3年)
 「住宅の耐震性能に関する実験的検討」

受賞者の写真

 過去の大地震で建物の崩壊により多くの死傷者が出ることを知り、被害を減らすために崩壊しない建物を建てたいと思った。そのためには建物の振動特性を知ることが必要と考えこの実験を行った。
 まず、身近な材料(まな板、定規)で1階建てと2階建ての模型を製作し、模型を自由振動させてその振動特性を把握した。次に、疑似的な制振装置を模型に取り付け、自由振動ならびに振動台により共振時の周期の振動を模型基部に与える強制振動において、制振装置の効果を調べた。具体的には、ゴム紐による筋交と、様々な液体を入れた円筒プラスティック容器による同調液体ダンパーを模型に設置し、装置の種類・個数・設置位置に応じた定量的な低減効果を把握した。
 本研究の結果は、建物の耐震設計や制振装置の導入に活かせると考えている。今後は模型や制振装置の条件を変更し、より多様で実践的な実験を行いたい。

 

〇 山梨県立韮崎高等学校 環境科学部
 「プラスチックごみを利用したコンクリートの開発〜異方性コンクリート・軽くて強いコンクリートの作成を目指して〜」

受賞者の写真

 飯野、神澤が令和5年から始めた研究で、現在は1年生の野々村に引き継がれている。コンクリートにプラスチック片を混入すると、そのプラスチックに沿ってコンクリートが破断していることに気づき、その性質を応用すれば、割りたい方向に割れるコンクリートが開発できるのではないかと研究を深めていった。この一定方向にだけ弱い性質「異方性」をより発揮するために、コンクリート内のプラスチック片の向きを揃える方法、なぜプラスチックがあるとその方向にコンクリートが破断するかの解明、さらには立体的なプラスチックを混入することでコンクリートにかかる力の向きを逸らして破断する方法も発見した。
 この発見は、コンクリート建築現場の解体作業の危険の減少に貢献できるはずで、さらに今後もコンクリートの魅力を発信できるような研究を続けていきたい。

 

〇 山梨英和高等学校 自然科学部
 「ミジンコウキクサを用いたバイオエタノール生成」

受賞者の写真

 本研究は先輩の水質浄化に利用したミジンコウキクサをどのように再利用したらよいのかを考える中で研究テーマが生まれた。大量発生するウキクサを利用し微生物によるバイオエタノールを生成する最適条件を見出すことを目的とした。研究方法としてウキクサに付着する腐敗菌の働きを抑えてアルコールを発生するため、使用微生物として米麹とイースト菌による最適温度、微生物の比率,最適pH の実験をした。その結果 @ 最適温度は20〜30 度と考えられる。A米麹なしでもアルコール発酵は行われる。B 米麹の糖化作用によって効率的にアルコール発酵が行われる。C米麹で糖化3 日後にアルコールが最高値を示す。DpH8(弱塩基)が最適pH であり強塩基では微生物の活動が阻害される。ということが分かった。

 

〇 古屋 信人(駿台甲府高等学校1年)
 「日中の活動と睡眠の関係」

受賞者の写真

 本研究の目的は、健康を支える要素の中で重要と考えられる睡眠について、日常生活との関係を明らかにし、睡眠の質を予測・改善できる指標を見つけることである。
 第一の研究では、睡眠中の心拍数が低いほど睡眠の質が高いと仮定し、約1年半にわたりスマートウォッチで記録した健康データを分析した。その結果、日中のHRV(心拍変動)が高いほど睡眠中の心拍数が低く、睡眠の質が高くなる傾向が見られた。一方、運動時間や歩数との関連性は低く、身体や心の状態が睡眠に影響している可能性が示された。
 第二の研究では、中学生を対象にアンケート調査を行い、睡眠休養感と生活習慣との関係を分析した。その結果、睡眠時間が長く、インターネット利用やストレスが低いほど睡眠休養感が高くなることが分かり、インターネット依存が睡眠悪化を招く可能性が示唆された。
 今後は研究の精度向上に加え、腸内細菌と睡眠の関係など新たなテーマにも取り組みたい。

 

〇 青野 峰芳(山梨県立甲府第一高等学校2年)
 「地すべり発生メカニズム研究のための小型実験装置開発」

受賞者の写真

 小学校高学年の頃、ゲームをきっかけに防災に関心を持つようになった。静岡県熱海市伊豆山で発生した土石流災害を知り、最大浸水深が具体的に示されている洪水のハザードマップと比べて、土砂災害のハザードマップは被害の様子をイメージしにくいと感じた。
 そこで、特に被害状況を想像しづらい地すべりに着目し、ハザードマップの改良を目指して、地すべり発生メカニズムの研究を開始した。地すべり発生メカニズムの解明に向け、毎年度、実験装置の作成・実験・考察・改善を繰り返し、斜面上部から水を浸透させる独自方式の小型実験装置を開発した。適切な条件下では、典型的な前兆現象と類似した挙動を伴って地すべりを発生させることに成功した。相似則を厳密には満たさない小型装置による実験ではあるものの、地すべり発生を一定のメカニズム的妥当性をもって再現できたと考えている。
 今後は、科学的理解を深め、被害の軽減に貢献していきたい。