第22回(令和6年度)児童・生徒科学賞受賞校概要
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山梨県立韮崎高等学校生物研究部
「カブトムシの腸内細菌W―腸内細菌の活性温度を探る−」
「カブトムシの幼虫」と「その腸内細菌」の相利共生関係を明らかにした先輩の研究を引き継ぎ,腸内細菌の活性がより高まる条件を調べてきた。その研究の中で,カビ(菌)に抗生のある物質を生成(阻止円を形成)している細菌を発見、以後は、その細菌をゼータ(ζ)と名付け、研究の主対象とした。ゼータの作る阻止円は27.5℃以上という高温化でのみ形成される。一見すると、抗生物質によりカビの繁殖を抑えられることから、カブトムシの免疫を高めることにも繋がり、先輩たちの研究した相利共生関係の新たな一面も明らかにすることができたと考えられるが、よくよく考えると、腸内細菌がいるのは幼虫段階であり成虫には腸内細菌は引き継がれないこと、盛夏の頃には成虫となっていることから、ゼータの作る抗生物質がカブトムシにどのように影響するかは未解明のままである。いつか誰かがこの研究を引き継いでくれることを期待している。
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山梨英和中学校・高等学校自然科学部
「甲武信パークにおけるキシャヤスデの生態分布・ラミナータライン」
本校自然科学部キシャヤスデ班は2017年から中部山岳地方の山地帯から亜高山帯下部に生息する固有種であるキシャヤスデの総合的な研究を進めてきた。今回は奥多摩・奥秩父山系がユネスコエコパークに指定されたことを契機として調査地点をパークの標高1,200m以上の41地点に定めて生態調査し,個体を飼育して観察や,冬眠・休眠や薬剤耐性について考察した。山梨県甲武信岳から長野県三国山にかけての秩父山系の稜線を挟んで西に八ヶ岳群が東の奥多摩群がすみわけていた。この線を「ラミナータライン」と命名した。これら2群は生活史サイクルが4年ずれた齢同調群であることがわかった。また両群とも標高1,200mの地点から姿を消した。7齢までの個体(亜成虫)はクチクラ層が未発達のため死滅する個体が目立った。8齢(成虫)でも0.01%の殺虫剤の3回噴霧に耐えられる個体はいなかった。2024年八ヶ岳群の発生状況は標高1,300m付近で1〜2頭/uに減少してJR小海線上には出現しなかった。今回調査結果から4年・8年後の秋には標高1,500m前後の山地帯にひっそりと発生すると考えられる。