第21回(令和5年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

〇 山梨県立韮崎高等学校生物研究部
 「カブトムシの腸内細菌U」

受賞者の写真

  木材を分解するための酵素の遺伝子をもたないカブトムシが、幼虫時代にそれらを食べて生育しているのは、腸内細菌が消化を助けているからである。
この共生関係は、カブトムシにのみ利益のある片利共生と考えられているが、腸内細菌にも利益のある相利共生ではないかと仮説をたて、研究を始めた。@嫌気性の腸内は細菌の捕食者である原生生物にとっては生育しにくい環境であり、腸内は外敵から身を守れる環境であること、A中性?弱酸性の土壌よりもアルカリ性の腸内の方が活性が高い細菌がいること、から相利共生であることが確認できた。
今後は、成虫になると糞をしなくなるカブトムシから、細菌がどのようにして土壌に戻るのかのルートの解明(死骸となり分解されて戻るのか、タヌキ等のカブトムシの捕食者の腸内を経て糞として排出されるのか)、それによって細菌の活動域の拡散につながるのか等、生態系全体を視野に入れた研究をしていきたい。

 

〇 山梨英和中学校・高等学校自然科学部
 「山梨県中北地方におけるカラスの行動」

受賞者の写真

カラスの営巣地ならびに集団ねぐらを発見し、生態と行動について観察して定量的に集約する。
観察の方法は下記のとおり。
(1)営巣地
・営巣地を2か所発見し、規模特徴を集約する。
・カラスの営巣樹を整理し、空き巣率を求める。
・カラスの鳴き方を観察し、ソナグラムで確認する。
・鳴き始め時刻と泣き終わり時刻を集計する。
・カラスのなわばり空間の大きさを求める。
・カラスの天敵に対する行動を観察し整理する。
(2)集団ねぐら
・集団ねぐらを2か所発見し、規模. 特徴を集約する。
・ねぐら内の生態を観察する。
・ねぐら帰着時刻を集計する。

観察の結果は下記のとおり。
(1)営巣地
・営巣地を甲府市愛宕町と甲斐市牛句に集団ねぐらを甲府市中央と甲府市下帯那に各2箇所発見した。営巣地は小規模である。
・常緑樹の高木にハシブトガラスが落葉樹にハシボソガラスが営巣する。
・空き巣率は全巣の50%以上と高く、古巣の再利用率は30%ほどである。
・ソナグラム記録からハシブトガラスのほうが多様な泣き方をする。
・繁殖期のなわばり空間は円筒形でありハシブトガラスがハシボソガラスの4倍の大きな空間を占有する。
・繁殖期のカラスの最大の天敵は鳥類である。小型鳥類には攻撃、大型鳥類には慰撫作戦をとる。
(2)集団ねぐら
・ねぐらは山林とビル街と極端な場所にある。
・ねぐらは混軍で形成され、就眠場所を区別(すみわけ)している。
・ねぐらは中規模で帰着時刻は夕刻(照度10ルクス前後)が最大数である
・帰着方向は西方面が最大であった。
(3)カラスの行動
・繁殖の場所と集団行動の時間・場所を区別している。
・人の近くに生息し、人に守られている。