第18回(令和2年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

〇高校部門 山梨県立甲府南高等学校(物質化学部)
 「鉄を用いた金属樹生成の研究」

受賞者の写真

 硝酸銀水溶液に鉄くぎを入れると、鉄と銀のイオン化傾向の差より銀樹(銀の樹状結晶)が生成する。これは 2020 年のセンター試験の化学基礎でも出題されたが、私たちが実際に実験をすると銀樹は生成しなかった。この理由を明らかにするために、硝酸銀水溶液と鉄片で銀樹が生成する条件を研究している。昨年の研究結果では、硫酸イオンは銀樹の生成を促進し、硝酸イオンは抑制すると考えた。今年は鉄片表面の電子顕微鏡写真を撮影し、銀樹が生成しない理由が酸化被膜ではないことを確認した。 また、硫酸銀水溶液を用いて銀樹を生成させ、硫酸イオンの関与を明らかにした。そして、硫酸に浸した後に黒くなった鉄片を硝酸銀水溶液に入れると銀樹が生成することに着目し、銀樹の生成に酸化鉄が関与しているのではないかと考え、様々な条件で実験を重ねた。その結果、酸化鉄存在下では銀樹が生成したため、酸化鉄存在下における銀樹の生成モデルを構築した。

 

〇高校部門 山梨英和高等学校(自然科学部)
 「富士山東麓山中ハリモミ林は衰退するのか」

受賞者の写真

 私達は指定天然記念物である「山中のハリモミ純林」が年々衰退している事を知り2018年からコドラート調査,土壌動物調査等を継続研究してきた。今年は最終年として「ハリモミ純林」を空中,地上,地中から調査研究し,ハリモミ林の現状と持続可能性を明らかにする事を目標に研究を進めてきた。研究方法として新たにドローンによる空撮を取り入れ,定量的に調査した。現在ハリモミ純林は場所によって優占樹種が異なる等モザイク様の混交林を形成している。1960年代から純林のハリモミの衰退が始まり現在も長期衰退傾向が続いているが絶滅はしないと示唆された。高木ハリモミ林の林床に実生や稚樹が見られる事から今後この森林は陰樹のウラジロモミや陽樹のコナラと共に針・広混交林を形成すると考えられる。ハリモミ衰退の要因を解明する為に集積したデータを解析する一方,ハリモミ純林を後世に引き継ぐ為にハリモミ純林一帯のエコパーク構想を提案したい。