第17回(令和元年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

受賞者の写真


○小学校の部 早川町立早川北小学校
 「BEANS(ビーンズ)(自然科学者になろう)」


 早川北小学校は9月1日現在全校20名の小規模校である。本校がある早川町は、ユネスコエコパークに指定されるなど自然豊かな町である。また、校区には、ネイチャーガイドの専門家が常駐する野鳥公園がある。  そこで、平成28年度より、野鳥公園を中心に、自然に触れ合いながら、児童の科学的な見方や課題解決能力の育成、コミュニケーション能力の育成等を目的に調査・探求活動を行っている。3年生以上が総合的な学習の時間を使い、植物・動物・昆虫等から自分のテーマを決め、ネイチャーガイドの指導を受けながら、課題を解決していく。数字や写真等でデータを収集・整理し、2月には保護者や地域の方々の前で発表する。


○高等学校の部 山梨県立都留高等学校 自然科学部
 「大月周辺の地質の成因に関する研究」


 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)のカリキュラムの一環で始めた地域の地質研究についてのグループ研究を10年にわたって継続し、多くの新事実を科学的に明らかにし、山梨県内の科学研究のレベル向上に貢献した。

  • 2009年 笹子川における河川礫の調査
  • 2010年 桂川の河川礫の特徴と岩殿山を構成する礫の比較
  • 2011年 大月〜上野原地域の桂川の河川礫と河岸段丘を構成する段丘礫の特徴
  • 2012年 山梨県東部地域における丹沢山地の衝突が日本列島に与えた力の向きの解析
  • 2013年 西桂層群における桂川礫岩層の堆積環境についての考察
  • 2014年 上野原市の鶴川流域の地質とその形成史について
  • 2015年 岩殿山を構成する岩殿山礫岩層の礫の方向性から古流向を探る
  • 2016年 岩殿山の地質調査
  • 2017年 山梨県大月市における岩殿山礫岩層の堆積環境について
  • 2018年 岩殿礫岩層中の礫の起源について


○高等学校の部 山梨英和中学校・高等学校 自然科学部
 「富士山梨ヶ原の野焼きによる土壌動物の多様性変化」


 山梨県の富士山梨ヶ原では毎春野焼きが行われている。本校では、富士山が世界文化遺産に指定されて以来、環境省の許可を得て、富士山の1合目から5合目までの生態系と生物多様性について研究を進めてきた。その中で、梨ヶ原の野焼き(人為的攪乱)の効果(遷移停止、害虫駆除、草原維持)について関心を持ち、野焼きの効果に及ぼす影響を土壌動物を指標として明らかにした。その中で、火災耐性のある植物を明らかにしてその植物のある3地点と土壌動物の関係を明らかにした。梨ヶ原の植生は、すべてが高茎草原ではなく、優占種がススキ、ススキ+アカマツ、ススキ+ハンノキ、ススキ+カシワの4種の地域が見られそこで土壌のコドラート調査を実施した。土壌動物の個体数、種類数、多様度を野焼き前と後で比較すると個体数は最大で50%の減少(特にトビムシの減少が大きい)が、種類数は40%(植生によって異なる影響がある)、多様度は(シンプソン平均0.93)で0.01の減少に留まった。野焼き後の動物の復元率からみると、ススキ草原以外の耐火性の樹種の生育する3地点は年月とともに増加して10月には完全に復元している。野焼きによって一時的に土壌生物の多様性は減少するが秋には復元することが示唆される。耐火樹のうち裸子、被子、芳香の有無による差異はなかった。野焼きによって土壌動物は全滅することはないことが示唆された。