第15回(平成29年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

○高等学校の部 山梨県立韮崎高等学校 環境科学部
 「甘利山土壌環境調査」

受賞者(山梨県立韮崎高等学校)の写真

 南アルプスユネスコエコパークの緩衝地域に位置する甘利山はレンゲツツジの群生地として知られてきた。しかし、近年レンゲツツジの個体数が激減しており、その原因はシカによる食害とされている。
 平成25年、山梨県立韮崎高等学校の環境科学部では、このことに関する現地調査を行った(8月)。その結果「レンゲツツジのシカによる被食痕が少なく新芽が見られる」「シカ糞が他のシカが多く生息する地域(みずがきやま自然公園等)に比べて少ない」ことが判った。このことにより、レンゲツツジの個体数減少の原因は単にシカの食害によるものだけではないと考え土壌調査を継続的に行っている。調査はセルロース分解菌密度、含水量、リン酸濃度、pHについて校舎近隣の土壌と比較することで検証した。その結果、セルロース分解菌密度は季節による変動はあるものの安定していることが判った。含水量は土壌採取日の前の天候に左右されるという予想に反し、比較的安定した値を示した。
 他方で、5年間で大きく変化しているのは土壌のpHであった。甘利山土壌のpHは年々低下し、酸性化が進んでいることが判明した。植物の主要な栄養素であるリン酸は弱酸(中程度の酸)であるため、土壌の酸性化が進むことでイオン化が阻害されるとともに、溶出する金属イオンと不溶性の塩を形成することで植物の栄養吸収に悪影響を与えていることも考えられる。レンゲツツジはシカの食害、土壌の酸性化による貧栄養など複合的な原因があるのではないかと考えている。
 現在従来の調査を継続しつつ、水耕栽培によりレンゲツツジの生育に与えるpHの影響について検証を始めた。


○高等学校の部 山梨英和中学校・高等学校 自然科学部
 「シラカンバ樹液の抗菌活性評価」

受賞者(山梨英和中学校・高等学校)の写真

 虫歯予防効果があるといわれているキシリトールは糖アルコールでありシラカンバ樹液から抽出される。山梨英和中学校・高等学校の自然科学部では、本研究においてシラカンバ樹液を利用し、虫歯の原因菌であるミュータンス菌に対する影響、及び植物病原糸状菌に対する影響について実験を行った。
 実験の結果、シラカンバ樹液にはミュータンス菌の増殖を抑え、口腔内を清潔に保つ作用があるということが分かった。一方で灰色カビ病と炭そ病菌の増殖は抑制しない。このことから、シラカンバ樹液にはミュータンス菌にだけ効果のある抗菌性物質が含まれていることが考えられる。